落語は、日本独自の伝統芸能であり、聞き手を楽しませるために繰り出される滑稽な話や、風刺的な話などを演じる口演芸能でであり、現代でも多くの人々に愛されています。
本記事では、そんな落語の中でも特に人気が高い演目について紹介します。
【第10位】井戸の茶碗
落語の「井戸の茶碗」とは、人情噺や武家噺に分類される古典落語の名作です。
このお話は、正直者の屑屋の清兵衛が、浪人の千代田卜斎から仏像を買い取り、細川家の武士・高木佐久左衛門に売ります。
しかし、仏像の中から大金が出てきて、清兵衛と高木はそれを千代田に返そうとしますが、千代田は受け取りません。
そこで、千代田は自分の持つ井戸の茶碗という名器を高木に渡しますが、それがさらに大きな騒動を巻き起こします。
このお話は、登場人物がみんな正直で優しいという明るい人情噺であり、滑稽な場面も多くあります。
落語を初めて聞く方にもおすすめの演目です。
【第9位】妻に賭ける
「妻に賭ける」は、夫婦の愛と裏切りを描いた落語です。
主人公の弥七が、妻お染を賭けてギャンブルに挑戦する物語です。
お染が、弥七に対する思いを語るシーンや、弥七がギャンブルに熱中する様子が描かれ、笑いと感動を同時に味わうことができます。
【第8位】鰍沢
落語の「鰍沢」は、雪山で迷った商人が熊の軟膏売りの家に泊まるという話です。
商人は、その家の女房がかつて吉原の遊女だったことに気づきますが、彼女は商人を殺して金を奪おうと企んでいました。
しかし、商人は久遠寺の「毒消しの護符」を持っていたおかげで難を逃れます。
この話は、鰍沢の急流や卵酒に痺れ薬を入れるという趣向が面白く、また、お熊の美しさと残忍さの対比が効いています。
鰍沢には「鰍沢二席目」という続編もあります。
【第7位】野崎詣り
落語の「野崎詣り」とは、上方落語の演目のひとつで、北河内の寺院・慈眼寺(野崎観音)への参拝を題材にした噺です。
この噺では、喜六と清八という名コンビが、船で野崎観音に向かいますが、途中で土手を歩く人たちと口喧嘩をします。
口喧嘩は、野崎詣りの風習で、言い勝ったらその年の運がいいという運定めの喧嘩です。
しかし、喜六は清八から教えられた文句を覚えられずに、しどろもどろになったり、謝ってしまったりします。
最後には、「山椒は小粒でもヒリヒリ辛い」という決め台詞を言おうとしますが、「小粒」を忘れてしまい、土手の人にからかわれます。
【第6位】植木屋娘
落語の「植木屋娘」とは、江戸時代の植木屋の主人とその娘のお光、そして寺に居候している武家の出の伝吉との間に起こる騒動を描いた噺です。
植木屋の主人は、伝吉に書き出し(請求書)を書いてもらったことがきっかけで、伝吉を気に入り、娘のお光と結婚させて養子にしたいと考えます。
しかし、伝吉は五百石の跡目を相続する身であり、寺の和尚はその話に応じません。
そんな中、お光が妊娠したことが発覚し、植木屋の主人は喜び勇んで寺に行きますが、果たして伝吉がお光の子供の父親なのでしょうか。
この噺は、植木屋の主人の無知やせっかちさ、お光の恋心や秘密、伝吉の正体や立場などが絡み合って展開していきます。
笑いと感動がある落語です。
【第5位】紙入れ
紙入れとは、古典落語の演目の一つで、不倫を題材にした艶笑噺です。
原話は安永三年の「豆談義」に収録されている「かみいれ」で、貸本屋の新吉が得意先のおかみさんと密会するものの、旦那が帰ってきてしまい、紙入れ(財布)を忘れて逃げ出すという筋書きです。
その後、新吉は旦那に紙入れを見つけられないかと心配しながらも、おかみさんが紙入れを隠してくれていたことや、旦那が鈍感であることに気づきます。
この噺は、三者三様の性格や駆け引きが面白く、上方落語ではオチも異なります。
【第4位】饅頭こわい
「饅頭こわい」とは、古典落語の演目の一つで、広く知られた噺です。
原話は中国の笑話集『笑府』にありますが、日本では江戸時代に翻訳され、さまざまな笑話集に収録されました。
あらすじは、暇を持て余した町の男たちが集まり、それぞれ怖いものや嫌いなものを言い合います。
その中に、「世の中に怖いものなどない」と豪語する男がいますが、本当は「饅頭」が怖いと白状します。
他の男たちは、その男をからかって饅頭を大量に買ってきて枕元に並べます。
目覚めた男は、声を上げて慌てふためきながらも、饅頭を全部食べてしまいます。
怒った男たちが本当に怖いものを聞くと、「このへんで濃いお茶が一杯怖い」と言っておしまい。
この噺は、饅頭が怖いという奇妙な設定と、それを利用して饅頭を食べるという狡猾な行動で笑いを誘います。
また、最後の「濃いお茶が一杯怖い」という言葉は、饅頭を食べた後にお茶が欲しいという意味であり、さらに饅頭攻めに対する皮肉でもあります。
【第3位】時そば
落語の「時そば」とは、古典落語の演目の一つで、蕎麦の屋台で起こる滑稽話です。
主人公は、蕎麦屋の商品や店構えをほめちぎりながら、代金を一文ごまかす巧妙な手口を見せます。
しかし、その手口を真似しようとした別の男は、時刻の違いによって逆に損をしてしまいます。
この話は、江戸時代の時法や蕎麦の値段の変動などを背景に持ち、麺をすする音や勘定の数え方などが見せ場となっています 。
【第2位】寿限無
「寿限無」は古典落語の代表的な前座噺(まえざばなし)の一つです。
前座噺とは、本番の前に演じる短い噺で、滑稽さや早口言葉などが特徴です。
「寿限無」のあらすじは、次のようなものです。
男の子が生まれた親が、その子に長生きしてほしいと願って、お寺の住職に名前を考えてもらいます。
住職は、「寿限無」という名前を提案しますが、それだけでは物足りないと思った親は、住職が言う縁起の良い言葉を全部つけてしまいます。
その結果、子供の名前は「寿限無寿限無五劫のすりきれ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝る処に住む処やぶら小路のぶら小路パイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助」という長すぎる名前になってしまいます。
その後、子供は大きくなって腕白になります。ある日、近所の子供と喧嘩をしてこぶを作ってしまいます。
子供は父親に言いつけに行きますが、その際に自分の名前を何度も繰り返さなければなりません。
そうこうしている間に子供のこぶは引っ込んでしまいます。
この噺では、長い名前を早口で言うことに滑稽さや難しさがあります。
【第1位】皿屋敷
落語の「皿屋敷」は、古典落語の演目の一つで、有名な怪談噺「番町皿屋敷」を滑稽にアレンジしたものです。あらすじはこんな感じ。
番町にある皿屋敷という廃屋には、お菊という美しい女中の幽霊が出るという噂があります。
お菊は井戸から現れて、皿を数え始めますが、9枚まで聞くと狂い死にすると言われています。
物好きな若者たちは、お菊の幽霊を見ようと皿屋敷に行きますが、6枚まで数えられたところで逃げ出します。
その後、お菊の幽霊が美しいという噂が広まり、見物人が殺到します。
商売人も弁当や酒を売ったり、見学ツアーを組んだりして儲けます。
お菊も観客に愛想を振りまいたりして、スター気分になります。
しかし、ある夜、観客が多すぎて逃げられなくなり、9枚まで数えてしまいます。
観客は恐怖に慄きますが、お菊は10枚から18枚まで数え続けて、「明日はお休み」と言って消えます。
この落語は、怪談の雰囲気を逆手に取って笑いを誘うもので、お菊の幽霊のキャラクターが魅力的です。
まとめ
以上が、「落語の人気演目TOP10」でした。
これらの演目は、どれも聞き手を楽しませる内容で、江戸時代から現代に至るまで愛され続けています。
落語に興味がある人は、ぜひ一度聞いてみてください。
また、落語はその時代時代で話された言葉や文化に基づく演目も多く、日本の歴史や文化を知るうえでも興味深いものがあります。
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